■暴れる鬼 火の粉散らす
▼東光寺 「田遊び・鬼会」五穀豊穣、無病息災祈る
1月号からスタートした「加西のお祭り ヨーイヤサー」。市内では各地でさまざまな祭りが行われています。昔から続く伝統的なものも多く、地区ごとに
違った特色があります。
今月号は、毎年1月8日に行われる、「東光寺田遊(たあそ)び・鬼会(おにえ)」を紹介します。
国の重要無形民俗文化財に指定されている、上・下万願寺両町の伝統行事「田遊び・鬼会」。1月8日の夜、上万願寺町の東光寺で行われました。室町時代末期には始まっていたとされ、450年以上続く祭りです。田遊びの福太郎・福次郎、鬼会の赤青の両鬼は、上・下万願寺町の厄年の男性が引き受け、演じます。
田遊びは、稲の豊作を予祝する芸能で、境内で田打ち・代掻(しろか)き・田植えなど収穫までの行事を模擬的に演じます。田の中に眠る穀霊の発動をし、当年の稲が豊かに実ることを祈る儀式であり、黒い面と烏帽子(えぼし)姿の福太郎・福次郎が稲作のしぐさを演じて五穀豊穣を祈願します。県内では同寺のみで営まれています。
鬼会は、たいまつを手に木槌を腰にさした赤鬼と鉾を手にした青鬼が境内の東西からそれぞれ6回(今年はうるう年のため東の出7回、西の出6回の計13回)お堂を縦横無尽に暴れまわり、悪霊や災難を追い払います。この時、周囲の人たちは「鬼こそ鬼よ、西下の鬼よ」とはやしたてます。赤青の両鬼は、回を重ねるごとに動作が激しくなります。
第13回目の鬼が退場するのを合図に本堂内陣結界に飾ってある13個しかない「鬼の花」を取るために周りの人たちは殺到します。椎の木が倒され、鬼の花に付いている小枝の奪い合いをします。持ち帰れば、けがれを払い厄除けになるとか、田の水口に挿すと、稲に虫がつかないとも信じられています。
上万願寺町区長の国田徹也さんは「コロナ禍が和らぎ4年ぶりに本格的に開催できた。皆さんの協力があってこそです。今後も伝統があり、長く続く祭りにしていきたい」、下万願寺町区長の宮川貞二さんは「今年は赤鬼、青鬼とも迫力があり参拝客も喜んでくれたと思います。災厄を払って良い年にしてほしい」とそれぞれ話しました。
◇災厄払う「鬼の花」
鬼の花は仏に供える削り花です。椎の木で作られています。参拝客が1年の無病息災を願って持ち帰る花も含めて100個ほど作ります。椎の木も今や少なくなり、最近では網引町や多可町方面まで切り出しに行くといいます。12月中旬に椎の木の下見をし、1月4日から鬼の花造りを行います。